2016年11月22日 建設業の税務会計 個人事業主が法人になるメリット・デメリット
設計事務所や工務店で個人事業を営んでいる方は、法人になった方が良いと言われたことが一度はあるのではないかと思います。
確かに法人になることで得られるメリットもあるのですが、果たして法人になるのが本当にいいのでしょうか?
ここでは法人になるメリット・デメリットを書いていきますので、ぜひ法人になるか悩んでいる場合は、参考にしてみてください。
法人になるメリット
・取引先からの信頼が増す
会社という組織で事業を運営することで、得意先や仕入先などの取引先からの信頼が増し、取引を有利に進めることができるようになる可能性があります。
実際に建設業界などでは、法人でないと受注できない仕事もあります。
・資金調達を行いやすくなる
取引先だけでなく、金融機関からも信頼を得やすくなり、個人事業よりも資金調達も行いやすくなる可能性があります。
・損金に計上できる費用が増える
個人事業であれば、生命保険などは事業の経費にはできませんが、法人の場合は損金に算入することができ、うまく活用することで大きな節税効果を得ることができます。
その他にも、個人が非課税で受け取ることができ、法人の損金にもなる出張手当を支給できるということも大きなメリットの一つです。
・所得分散することで全体の税コストを抑えられる
法人になると、事業主は役員報酬という給与を受け取ることになりますが、給与として受け取ることで給与所得控除という控除を受けることができます。さらに、法人の所得と個人の給与所得に所得を分散させることで、それぞれが低い税率で税金を支払うことができる可能性があります。
また、役員を退職する際に退職金を支給することで、給与で受け取るより大幅な控除を受けることができます。これでかなり大きな節税効果が得られます。
・繰越欠損金を活用できる
個人事業の場合は繰越欠損金(赤字を翌期以降に繰り越して黒字と相殺できる制度)が3年しか持ち越すことができませんが、法人の場合は9年も持ち越すことができます。
ここまでメリットを書いてきましたが、やはりいいことばかりではありません。
ここからは法人になるデメリットについて書いていきます。
法人になるデメリット
・法人設立時にコストがかかる
法人になるには登記が必要になりますが、それには登録免許税等の印紙代と司法書士への報酬が必要になります。
・社会保険に加入する義務が発生する
個人事業の場合は、雇っている従業員が5名以下であれば事業主の社会保険への加入義務はありませんでしたが、法人の場合は従業員の数に限らず加入する必要があります。給与の受給者と法人が折半して負担することになりますので、法人にとっても大きな負担になります。
・赤字でも法人税の納付が必要
赤字の場合でも均等割という法人地方税は納税が必要です。
納税地によって、資本金の金額によって納税額は変わってきます。
・決算書などの情報開示を求められる場合がある
大きな企業と取引をする場合など、法人の経営状況を調査される可能性があります。
シンクタンク系の会社などから情報提供を求められたり、直接決算書の開示を求められることもあります。
情報開示を拒否してしまうと、取引をさせてもらえない場合もあります。
・会計処理が複雑になる
個人事業の場合は収入から経費を差し引いて所得を導くことができ、事業主自身が申告をしている場合も多いですが、法人になると会計処理や申告業務が複雑になります。
そのため、必ず専門家(税理士等)に協力を得る必要があります。
いかがでしたか?
法人になるメリットもデメリットも総合的に見て、法人になるかどうかの判断をすることをお勧めします。
また、税理士等の専門家にシミュレーションを依頼してみるなど、相談をしてみるのもいいでしょう。