2016年12月05日 建設業の税務会計 建設業の粗利益の計算方法
粗利益とは、売上高から売上原価を引いた後に残ってくる利益のことを指します。建設業の粗利益の計算方法は、一般の事業とは異なる特徴がかなり多くあります。
具体的にいうと、建設業は工事期間が長くて請負金額が高額などの特徴があるため、一般的な会計とは異なった性質を持っています。
今回は、その特徴的な建設業の粗利益の計算方法について説明していきます。
一般的な会計との比較
まずは、建設業の粗利益の計算方法がどのように特徴的なのか、一般的な計算方法と比較してみてみましょう。
一般的な会計の代表として、卸売業を例にします。
卸売業の粗利益の計算方法は、「売上高-仕入高=粗利益」となります。
例えば、9千円の商品を仕入れて、1万円でそれを売った場合、上記の式に当てはめると、「10,000-9,000=1,000」となり、つまり粗利益は1千円ということになります。
卸売業の場合は、「商品を仕入れた」、「商品を売った」という単純な取引を計算すれば粗利益が把握できるというわけです。
そしてここがポイントなのですが、仕入や売上の計上時期は、基本的には「納品」を基準として考えます。仕入れたモノを得意先に納品した時点で、売上も仕入も認識するということになります。
ですので、実際に仕入れたモノでもまだ得意先に納品しておらず、在庫になっているモノは仕入に計上されません。
このように、卸売業の場合は納品時期が判断の基準になるということがポイントになります。
では、建設業の場合はどのような式になるのかというと、「完成工事高-完成工事原価=完成工事総利益(粗利益)」という式になります。
冒頭で書いたとおり、建設業は工事期間が長く請負金額が高額という特徴があります。
そのため、数か月に及んで材料を仕入れたり外注費や賃金に対する役務の提供を受けた場合でも、基本的には請け負った工事が完成するまで完成工事原価(売上原価)に計上はされません。
完成する前に元請先から入金があった場合でも、同様に完成工事高(売上)には計上されません。なので、工事が完成して引き渡しが完了した時点で完成工事総利益(粗利益)が認識できるということになります。
ただし、工事進行基準を採用している場合には、決算日においてかかった工事原価に比例する収益(一般会計でいう売上)を計上するという方法です。
具体的には、契約時に収益総額と原価総額を合理的に見積もり粗利益を求めておきます。そして、決算時点でかかっている工事原価に対して契約時に見積もっていた粗利益を割戻し売上に計上します。
式にするとこうなります。
「決算時にかかっている工事原価-契約時に見積もった粗利益率=決算時に計上する売上高」
決算時に未成の工事がある場合は、このように粗利益を計算して計上します。
建設業者が陥りがちなこと
これまで書いたとおり、実際に工事を請け負っておる最中には、基本的には売上も売上原価も計上されない状態が続きます。
その間に発生した売上原価や元請先から受け取った金額は、下記の科目を使って処理をします。
・未成工事支出金…まだ完成していない工事に対して支出した材料費、外注費、労務費等
・工事未払金…納品や役務の提供は受けているが、まだ支払っていない材料費や外注費等
・未成工事受入金…完成する前に元請先から受け取った工事代金の一部
これらの科目の性質と計上額の推移を把握していなければ、当初見積もっていた粗利益と実際に工事が完成してみて残った粗利益が全く違うという事態に陥る可能性もあります。
工事の進行具合と実際にかかっている売上原価を「未成工事支出金」や「工事未払金」で把握しながら、完成に向けて調整をしていくという仕事が経営者や責任者には求められると考えられます。
いかがでしたか?
科目の意味や性質、資金繰りの予測などは自身で調べるのには限界があるかもしれません。
もしわからないことがあったりもっと詳しく知りたい場合は、税理士等の専門家に相談してみてください。