2020年10月12日 建築巡り 設計事務所 建築巡り7-3 金沢(西田幾多郎記念哲学館・海みらい図書館)
さて、金沢旅行2日目の夕方~3日目です。
ここからは、金沢駅や市街地から少し離れた2カ所を訪れた話です。
西田幾多郎哲学記念館
まずは西田幾多郎記念哲学館。
前々回に少し触れましたが、西田幾多郎には『善の研究』という著書があります。
金沢を(再度)旅行するに当たって、前回以上に何か感じて考えて旅行したいなという気持ちがあったので、『善の研究』を読みながら電車で移動しました。
内容は非常に難解で、一回読んだ程度の私では、完全に理解するには至りませんでしたが、タイトルになっている「善」という言葉が指すのは一般的に言われる「善悪」の片側の「善」について考えるものではなく、そういった物事の二面性を全体として大きく捉えて人間としてどうあるかを思考する本でした。
そういった深い思想や哲学が育つ風土や環境が、金沢のどういう部分にあるのだろうとぼんやり考えながら、1人旅をしておりました。
建物へ向かう一直線のアプローチ。
こちらは外部のエレベーターと歩廊。
入口の横から。
写真は撮れませんでしたが、横から見ているこの部分が、西田幾多郎に関する展示室になっています。
その展示室の最後には、四方を壁に囲まれた屋外空間があります。
というより、「空を切り取った」空間といった方が良いのでしょうか。
1人で黄昏るための空間。
実は、類似する空間を見た事があります。
それは香川県の直島にあるベネッセハウスミュージアムです。
(安田侃HPより拝借
http://www.kan-yasuda.co.jp/works/public/018.html)
そちらには上の写真のように、彫刻作品があり、その上に座ったり寝そべったりして、空を感じることができました。
作品名は『天秘』。
さてさて話を戻しまして、入口正面。
講演会などを行うホールへの階段室。
逆さになった円錐のような形になっています。
さてコンクリートの打ちっぱなしや入口の雰囲気で、設計者がわかったのではないでしょうか。
そう、西田幾多郎哲学記念館は、安藤忠雄の設計です。
こちらを訪れた当日はちょうど座禅を組んでお話を聞くというイベントがあったので、参加しました。
(展示施設がある棟ではなく、最初の写真の正面に見えていたこちらの棟の最上階です。)
座禅は初めて体験したのですが、「何も考えないようにしよう」とすると何か考えてしまいますし、「あるがまま座っていよう」とすると半分寝ているような、起きているような、良く分からない感じになってしまいますね。
終わってから室内を眺めて、コンクリートの無機質な凛とした佇まいは、意外と座禅と合うのかなと思いました。
座禅の会が終わると、外はもう真っ暗でした。
西田幾多郎記念哲学館HP
http://www.nishidatetsugakukan.org/
海みらい図書館
旅行の最後に訪れたのは、金沢海みらい図書館です。
シーラカンスK&Hの設計です。
図書館だし、内部での写真撮影は無理だろうなと思っていたら、受付で「SNS等にはアップしない」という条件のもと、撮影許可をいただけました。
皆様も見学の際は是非尋ねてみてください。
ということで、(自分で撮影した写真はありますが)内部はHPから拝借しつつ紹介いたします。
内部空間には円形の窓から、優しく光が入ってきます。
(内観写真は、海みらい図書館HPより拝借
https://www2.lib.kanazawa.ishikawa.jp/index.html)
2・3階は大きなワンルームになっています。
(上の写真と同じくHPより拝借)
マリンスノー。
図書の空間に入ってすぐに、頭の中でそれだけがぼつりと浮かんできました。
急に思いついたので、びっくりして少し自分の頭の中を整理しました。
順を追ってみると、まずは光から「雪」を。
金沢と言えばぱっと連想されるのは兼六園の雪吊ですが、その雪です。
明る過ぎず静かな内部空間と、円形の優しい無数の光から、しんしんと降る雪を連想しました。
それに加えて「海」。
石川県が面している日本海と、海みらい図書館が冠する「海」という名称から、海の底に舞うマリンスノーが連想されたようです。
吹抜けを見上げたその一瞬だけで、モチーフがダイレクトに伝わってきた気がして、感銘を受けました。
それに続いて「蛍雪」という言葉も思い出しました。
冒頭で述べた思考を育てる風土とは何かという思考に対する、自分なりの答えが見つかったように思います。
厳しい自然環境が、自然と人を自分自身と向き合わせるような。
それが、深い思考を生み出す要因の一つなのかなとも思いました。
海みらい図書館HP
https://www.lib.kanazawa.ishikawa.jp/umimirai
終わりに
さて、最後に近江町市場で食べた海の幸をお見せして、終わりにしたいと思います。
これまで3回、金沢を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
私としては、海が近い城下町の伝統が現在も生きていることを実感できる素晴らしい旅でした。
その嬉しさが少しでも共有できているなら幸いです。
※写真は一部を除いて、筆者撮影
※設計者などの人名は敬称略