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2019年03月04日 設計事務所 国立代々木競技場第一体育館の屋根

建築家・丹下健三の最高傑作の一つとして、高く評価されている国立代々木競技場は現在、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにむけて耐震改修を中心とした改修工事が着々と進められています。

 

前回は、国立代々木競技場の全体的な概要をご紹介しました。

今回は、吊屋根構造として有名な、第一体育館の屋根について詳しくご紹介します。

 

 

1)主塔

 

建物の東と西に、主塔と呼ばれる鉄筋コンクリート造の高い塔が建てられています。

この塔は、後述のメインケーブルを支え、屋根の荷重を地面に伝える役割を持っています。

 

 

2)メインケーブル

 

主塔間に2本のメインケーブルが架け渡されています。

このケーブルは、屋根を構成する水上側の主材にあたります。

2本のケーブルはそれぞれ南側、北側の屋根を受け持っています。

 

メインケーブルは東西主塔の背後でバックステーとして地上レベルまで降ろされ、コンクリート構造物にアンカーされています。

このバックステー部分が、視認性の高い大きな開口のエントランスをかたちづくっています。

 

 

3)鉄骨吊材

 

メインケーブルと、建物外周壁頂部との間に、湾曲した鉄骨吊材が一定の間隔で架け渡され、屋根面形状をかたちづくっています。

メインケーブルが棟木、鉄骨吊材が垂木にあたると考えると、わかりやすいかもしれません。

 

この鉄骨吊材は設計当初、メインケーブルと同様、ケーブル材を使用することが考えられていましたが、ケーブル材では望ましい屋根曲面が得られなかったため、鉄骨に変更されたと伝えられています。

 

 

4)押さえケーブル

 

上述の鉄骨吊材と交差する方向に、一定間隔でケーブルが流されています。

鉄骨吊材同志を繋ぎ、屋根面の剛性を高める働きをしています。

 

 

5)屋根鉄板

 

屋根面材は、上述の鉄骨吊材の上に母屋を流し、4.5ミリ厚の鉄板を溶接したものとなっています。

 

 

6)越屋根

 

アリーナ上部には、越屋根が設置されています。

二本のメインケーブルを押し広げるように、一定間隔で鉄骨トラスのフレームが固定されており、それが越屋根の構造体となっています。

 

越屋根は、両サイドのガラス開口から自然光を取り入れ、越屋根下部のルーバー天を介してアリーナに光を落とす機能を有していましたが、現在では諸事情によりガラス開口は塞がれています。

越屋根の内部空間に設置された人工照明により、場内に光を供給しています。

 

以上、国立代々木競技場第一体育館の特徴について概要をご紹介しました。

改修工事完成の際には、あらためてじっくりと観察してみてはいかがでしょうか。

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