2017年01月19日 設計事務所 【実施設計】伝わる実施図面を描くコツNO.2
実施図面は、設計の意図がきちんと伝わることが重要となります。前回は、実施図面の中でも「導入部分」における作図のコツをご説明させていただきました。
今回は、その続きですが、「平面詳細図」と「矩計図」に関しての伝わる図面を描くコツをご紹介いたします。
1) 平面詳細図
基本設計で描く「平面図」と、実施設計で描く「平面詳細図」は役割が異なります。「平面図」は、クライアントとのコミュニケーションを図るものですが、「平面詳細図」は、施工者がつくるためのツールとなります。
(1) すべての図面情報を網羅します
平面詳細図は、設計図書全体の要であり、キープランです。他の図面の作成や施工の過程で加えられた変更は、必ず平面詳細図へ反映する必要があります。理想は、すべての設計情報を平面詳細図で網羅させることです。
(2) 部材の取り合い部分を正確に描きます
柱と外装仕上げ、開口部と間柱など、部材同士がぶつかったり、取り付いたりする箇所をできるだけ正確に示すことで伝わる図面になります。
(3) 造作物も最低限の情報を盛り込みます
造作物の外形寸法と仕上げ材程度の情報を記載します。記載することにより、造作物と周囲との関係を示すほか、その後作成する展開図や家具図などへのつながりも分かりやすくなります。このように、1つの図面をほかの図と関連づけることは、建物をつくりあげる上で重要です。
2) 矩計図
矩計図は、高さ方向の詳細図です。高さに関する寸法はすべて入れる必要があります。
(1) 高さ寸法の整理を行います
高さ寸法を描き込みすぎると見にくくなります。そこで、例えば、造作物に関しては、造作物をつくるための寸法ではなく、配置した家具と周囲との位置関係を把握するための寸法を記入していきます。また、構造材を基準とする最高軒高、軒高、桁高、基礎高などの寸法は、軸組図などの構造図とのつながりを示唆します。一方で、最高高さ、階高、天井高、床高は、仕上面でとった高さです。これらが両方明示されていることで、施工者は、構造と仕上げの位置関係を関連付けてイメージしやすくなります。
(2) 矩計図を描く場所の選定をします
矩計図で求められる切断面は、小屋組を正面から見た妻側と、桁行側の2つで、必ず両方作図するようにします。図にする切断面の位置は、スキップフロアやロフトのように、高さ方向での納まりが難しい位置で、開口部を含む面を選ぶと伝わりやすいです。
以上のように、実施図面では、必要なことを簡潔にまとめることにより、施工者に伝わる図面を作成することが可能ですので、ぜひ実務にお役立ていただければと思います。